空白の時間術――『WHITE SPACE』から学ぶ、忙しい人が自分を取り戻す方法

習慣

導入

気づいたら、1日が「予定」と「通知」と「締切」でぎっしり埋まっている。
朝から晩まで仕事をして、家に着いたら、なんとなく動画を流し見して、そのまま寝落ちする。

「今日、自分のために空いていた時間って、何分あったんだろう?」

私はジュリエット・ファント著、三輪美矢子訳の『WHITE SPACE ホワイトスペース―仕事も人生もうまくいく空白時間術』を読みました。

この本で語られる「ホワイトスペース」とは、意図的に予定を入れず、思考と回復のために残しておく“空白の時間”のことです
できる人ほど、この“何もしていない時間”を大事に使っているという視点は、私の時間の常識をひっくり返しました。

この記事では、この本を読んで感じたこと、自分の生活にホワイトスペースを取り入れてみた体験、そして最新のデータや研究をもとに、「毎日が忙しくて隙間時間なんてない」と感じている現代の会社員に向けて、“空白の時間術”の具体的な実践方法をまとめていきます


目次


現状・課題の理解

日本の会社員は本当に「隙間がない」のか?

「忙しすぎて隙間なんてない」と感じる背景には、いくつかのデータがあります。

  • ビジネスパーソンを対象にした調査では、スマートフォンの1日平均使用時間「3時間以上」の人が53.6%20〜40代では約2割が「5時間以上」という結果が出ています
  • 仕事時間が1時間増えると、「自由時間」が34.2〜41.1分減るという分析もあります。
  • 「仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスがある」労働者の割合が5割を超える水準で推移しており、その要因として「仕事の質や量」が約6割を占めています

つまり、

  • 我々の働く時間は長く
  • その上でスマホがありとあらゆる隙間時間を飲み込み
  • ストレスは高いまま

という状態になっている人が多いのが現実です。

健康・時間・お金・心理の4つの視点で整理

忙しい現代の会社員の1日を、4つの観点で切り分けてみます。

健康面

  • 長時間労働や高ストレスは、メンタル不調や心血管疾患などのリスクを高めることが多くの研究で示されています。
  • 疲れているのに、スマホや通知に囲まれて「脳が休む時間」がほとんどない

時間面

  • 仕事時間が増えた分、真っ先に削られるのは「自由時間」「家事・育児の時間」であり、睡眠時間や通勤時間は意外と変わらないという結果があります。
  • 「何もしない時間」は、最初からスケジュールに存在しないことが多い。

お金面

  • 常に忙しい状態だと、
    • コンビニ・デリバリー・タクシーなど「時間をお金で買う消費」が増えやすい
    • 疲れから衝動買いが増える
      といった形で、じわじわ家計にもダメージが蓄積していきます。

心理面

  • 時間意識調査では、
    • 58.0%が「タイムパフォーマンス(タイパ)を意識して行動している」
    • 71.5%が「なるべく無駄な時間は過ごしたくない」
      と回答しています。
  • 「無駄な時間=悪いもの」という前提が強く、私達は何もしない時間」に罪悪感を覚えやすいのです。

ここまで見てくると、“物理的に時間がない”だけでなく、“空白を悪者扱いする価値観”も、忙しさを加速していることがわかります。


原因分析・体験談

なぜスケジュールは「空白ゼロ」になってしまうのか

1. マルチタスクとスイッチングコスト

スマホとPCに囲まれた今の働き方では、「マルチタスク=仕事ができる」というイメージが根強く残っています。
しかし、心理学会が紹介する研究では、タスクの切り替えによって生産性が最大40%落ちることが示されています。

複数のタスクを行き来するたびに、脳は「いま何をしていたか」を思い出すためのエネルギーと時間を消費します。
本当は「集中するためのまとまった時間」と「リセットするための空白」が必要なのに、それをすべて埋めてしまうことで、かえって仕事が重くなっている状態です。

2. 「空白=サボり」という思い込み

学生時代から、「予定がぎっしり詰まっている=充実している」「暇=怠けている」というメッセージを受け取ってきた人も多いと思います。
その延長で、社会人になっても「何もしていない時間」があると、不安になったり、罪悪感を覚えたりしがちです。

『WHITE SPACE』の中で、「忙しさは必ずしも生産性や価値とイコールではない」ことを繰り返し指摘しています

けれど、私たちの頭の中にはまだ、

空白の時間=サボり
という誤ったラベルがベッタリ貼られたままになっていることが多いです。

3. スマホがあらゆる「隙間」を埋めるツールとなっている

さきほどの調査の通り、日本のビジネスパーソンの過半数が1日3時間以上スマホを使い、20〜40代の約2割は「5時間以上」です。

  • 信号待ち
  • 休憩時間
  • 電車を待っているホーム
  • 会議の開始前の3分
    本来であれば「ぼーっとできる時間」だった場所は、いまやほとんどスマホに占拠されています。

「時間がない」というよりも、「脳が何もしていない状態でいられる場所がなくなっている」と言ったほうが、実態に近いかもしれません。

現代のスマホはとても便利ですが、その裏で、私達は「常に画面を見ていないと落ち着かない状態」に慣らされています。本来ならテクノロジーのおかげで余るはずの時間を、「暇を埋めるための何か」で即座に埋めてしまう。その心理こそが、考える余白や退屈の時間を奪い、私たちの成長を静かに止めているのだと思います。

『WHITE SPACE』を読んで変わった、私の時間感覚

私が『WHITE SPACE』を読んで、いちばん刺さったのは、

ホワイトスペース=意図的に予定を入れない“何もしない時間”は、仕事と人生にとって燃料になる
という考え方でした。

それまでの私は、

  • 通勤時間は「情報を詰め込む時間」
  • 会議と会議の間は「メールを片付ける時間」
  • 帰宅後は「何となくショート動画で埋める時間」

という感じで、とにかく空白をゼロにする方向で動いていました。

本を読んだあと、まずやったのは「ラベルの貼り替え」でした。

  • 何もしていない時間=サボり → 頭の掃除をする時間
  • ぼーっとしている時間=無駄 → 次の一手を考える投資時間

具体的には、

  • 通勤電車で、最初の5分だけスマホを見ない時間にする
  • 会議が終わってから次の作業に入るまでに、1〜2分の“無音タイム”を入れる

この小さな実験を続けてみると、

  • その日のタスクの優先順位が頭の中で整理されている
  • ブログや副業のアイデアが、不意に浮かびやすくなる
  • 仕事終わりのどっとした疲れが、少し軽くなる

という変化を感じました。

「忙しいから、空白を削る」のではなく、
「忙しいからこそ、空白を意図的に入れる」という逆転の発想こそが、この本から学んだ一番のポイントです。


解決策と実践ステップ

ここからは、『WHITE SPACE』のエッセンスと科学的な知見を組み合わせて、忙しい会社員でも実践しやすい「空白の時間術」をステップ形式でまとめていきます。

Step1:空白の時間を自分の言葉で定義する

まず、この記事で扱う「空白の時間(ホワイトスペース)」を、自分なりの言葉に落とし込みます。

空白の時間=意図的に予定を入れず、思考と回復のためにあえて何も入れない時間

ここで大事なのは、「何分取るか」よりも、

  • 何のためにその時間を空けるのか
  • その時間に、何をしないのか

をはっきりさせることです。

例:私の場合の定義

  • 目的:
    • 頭の中を整理する
    • 次の一手を考える
    • ただ一度、呼吸を整える
  • やらないこと:
    • スマホ・PCを触る
    • メールやSNSを確認する
    • 新しい情報を取りにいく

こうやって定義すると、「空白=休むだけの時間」ではなく、“考えるための余白”という感覚が強くなり、罪悪感も薄れていきます。

Step2:1日の中に眠っている「空白候補」を洗い出す

次に、すでに存在している“隙間”を見つける作業です
「新しく時間を作る」のではなく、「今ある時間の中身を入れ替える」イメージを持ってください。

空白候補になりやすい時間帯の例

  • 通勤中(電車・車・徒歩)
  • エレベーターやレジの待ち時間
  • 会議と会議の間の5〜10分
  • 昼食後に席に戻るまでの数分
  • 仕事を終えて席を立つ前の5分
  • 寝る前、スマホを触っている最初の5〜10分

ここから、1日合計で10〜15分を「空白候補」としてチェックしてみます。

Step3:1〜3分のマイクロ空白から始める

いきなり30分の空白を作ろうとすると、スケジュールが崩壊します。
そこでまずは1〜3分のマイクロブレイク(短い休憩)から始めます。

マイクロ空白の具体例

  • 会議が終わったら、次の作業に取りかかる前に1分だけ目を閉じて深呼吸する
  • メールをまとめて処理したあと、椅子に座ったまま背伸びと肩回しを1〜2分する
  • 通勤のホームで電車を待っている1〜2分だけ、スマホを見ずに今日の優先順位を3つ心の中で唱える

2022年のメタ分析では、10分以内の短い休憩(マイクロブレイク)が、疲労感の軽減や活力の向上に役立ち、条件によってはパフォーマンス改善にもつながることが示されています。

また、アクティブなマイクロブレイク(軽いストレッチや歩行など)は、身体的・精神的な負担の軽減にも効果を持つことが報告されています。

「1〜3分の空白なら、なんとか捻り出せそう」と感じたら、それだけで大きな前進です。

Step4:週に1〜3回の“ブロック空白”をカレンダーに予約する

次の一手は、週単位でのまとまったホワイトスペースです

ブロック空白とは?

  • 長さ:15〜30分
  • 頻度:週1〜3回
  • 目的:
    • 1週間の振り返り
    • 中長期のキャリアやお金のことを考える
    • ブログ・副業・学びの方向性を整理する

『WHITE SPACE』の中でも、「考えるための意図的な時間を、予定としてカレンダーに入れること」を勧めています。

実践のコツ

  • 平日のうち1〜3枠、15〜30分の空白をカレンダーにブロックする
    • 例:火曜と木曜の10:00〜10:20、金曜の16:00〜16:30
  • 予定名はあえて「ホワイトスペース」と書いて、自分にも周囲にも見えるようにする
  • その時間に会議やタスクを入れたくなったら、
    • 「それは本当に今でないといけないか?」
    • 「他の時間に回しても問題ないか?」
      を必ず一度問い直す

Step5:ホワイトスペースを守るための3つのルール

空白を作っても、そのままではメールとSNSと通知に奪われてしまいます。
そこで、「空白を守るためのミニマムルール」を決めておきます。

ルール1:空白の時間は通知オフにする

  • スマホは常にサイレントモード、できれば別の場所(部屋)に置く
  • PCの通知も一時的にオフにする

ルール2:空白の時間は“マルチタスク禁止”

  • ノートとペンだけを手元に置く
  • 「今いちばん気になっていること」を書き出す
  • 1つのテーマだけに向き合い、他のことは考えない

タスクの切り替えによって生産性が最大40%低下し、集中力や判断力にも悪影響が及ぶとされています。
ホワイトスペースの時間だけは、徹底的にシングルタスクにします。

ルール3:つぶれた空白は、必ずどこかに振り替える

  • 急な会議で潰れたときは、その日の別の時間帯に5〜10分でもいいので再設定する
  • 「今日はホワイトスペースがゼロだった」と気づいたら、寝る前の3分だけでも、照明を落として静かに座る時間を取る

急な予定で、本来やるはずだった習慣の時間がつぶれてしまうことは必ずあります。だからこそ、「もし急な予定が入ったら、その日は◯◯に切り替える」と、あらかじめIf-Thenプランを決めておくといいと思います。そうしておけば、予定変更があっても習慣そのものは途切れにくくなります。


チェックリストと空白プラン表

空白の時間術・セルフチェックリスト

  • 自分なりの「空白の時間」の定義を書き出した
  • 1日の中の空白候補(通勤・休憩・昼休みなど)を5つ以上リストアップした
  • 今日から試すマイクロ空白(1〜3分)の場面を1つ決めた
  • 週1〜3回のブロック空白(15〜30分)をカレンダーに登録した
  • 空白の時間は通知オフ+ノート&ペンだけにするルールを決めた
  • ホワイトスペース中に考えたいテーマを3つ書き出した
  • 空白がつぶれたときの「振替ルール」を決めた

忙しい会社員向け・空白プラン表(例)

シーン空白の長さ実践内容の例
朝の通勤電車(往路)3分スマホを見ずに、今日「やらないこと」を1つ決める
午前と午後の仕事の区切り1〜2分目を閉じて深呼吸&タスクの整理
昼食後〜午後の仕事開始前5分ノートに「今いちばん気になっていること」を書き出す
仕事を終えて席を立つ前5分今日の「良かったこと」を1つ書く
週に1回のブロック空白20〜30分1週間の振り返りと、来週やめること/続けることの整理

まとめ

要点の整理

  • 現代の会社員は、長時間労働・高ストレス・スマホ依存により、「脳が何もしていない状態でいられる時間」が極端に減っている
  • 『WHITE SPACE』が提案するホワイトスペースとは、意図的に予定を入れず、思考と回復のために残しておく“空白の時間”です
  • マイクロブレイクやブロック空白を取り入れることで、疲労を軽減しながら、集中力と創造性を取り戻すことができます。

今日からできる具体的な一歩

  1. 通勤時間の最初の3分だけ、スマホを見ない時間にする
  2. 今日のどこかに、1〜3分のマイクロ空白を1回入れてみる
  3. 今週のカレンダーに、15〜30分の「ホワイトスペース」を1枠だけ予約する

どれか1つでも始めてみると、「忙しい1日の中にも、思っていたより余白がつくれる」という感覚が少しずつ育っていきます。

読者へのメッセージ

空白は、決して「サボり」ではありません。
あなたの頭と心をメンテナンスし、次の1歩を軽くするための、大事なメンテ時間です。

このブログも、私自身がホワイトスペースの中で考えたことを、読者のあなたと分かち合う場所にしていきたいと思っています。
最初の一歩は、たった1分で十分です。あなたの1日に、ほんの少しの“真っ白な時間”を足すことから始めてみてください。

参考文献

『WHITE SPACE ホワイトスペース』

  • ジュリエット・ファント著、三輪美矢子訳『WHITE SPACE ホワイトスペース―仕事も人生もうまくいく空白時間術』(東洋経済新報社、2022年)。ホワイトスペースを「意図的に予定を入れない時間」として位置づけ、創造性と生産性、心の余裕を取り戻す方法を解説している。
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